2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

私の日は遠い #9

シーラは自由自在に自身の姿を変えることができるが、戦闘には長けていない。暇な時にこっそり忍び込んだ図書館で読んだ生物図鑑でカメレオンの項目を見つけて読んだときは親近感が湧いた。カマキリやバッタも割と近いバイブス持ってるなと感じた。人間は身…

「ZOLA」鑑賞後メモ

youtu.be 「周りが勝手に動いているだけなんだ」というフレーズが語られるのは今年の5月に劇場公開されていた佐向大監督の「夜を走る」という作品においてだったが、「ZOLA」におけるゾラはどうだったろう?彼女もまた、そんなフィーリングを常に抱え続けな…

「NOPE」鑑賞後メモ

youtu.be 「失ったものを再びこの手に取り戻す」という物語の軸になっているプロットや、広大なアメリカの荒野の景色とその大地を駆け抜けていく馬といったような西部劇的なモチーフがメインになっているのは、IMAXカメラによってスペクタクルな映像を作り出…

「セイント・フランシス」鑑賞後メモ

youtu.be 本編の冒頭で自殺の話をする男とラストでドアを開けるフランシスの姿は対になっており、その両極の間で主人公のブリジットは常に揺れている。死と生、ノスタルジーと前進の間を泣きながら笑って生きる。その姿が現代の家父長制的なシステムの中でタ…

私の日は遠い #8

達夫は遠方に暮れていた。大倉から特殊な力を授けてもらったにも関わらず、目の前に広がる景色に大して何も思考が追いつかなかった。 「どうですかな、この場所は?気に入りましたか?」 そう達夫に尋ねる男は顔に微笑みを浮かべながら彼の隣に並んで立って…

YC2.5/Kamui

open.spotify.com 解けては結ばれ、やがてまた解けていく。再び巡り合う喜びと離ればなれになる悲しみのサイクル。テッド・チャンの「息吹」も同じような構造を持つSF小説ではあったが、Kamuiの「YC2.5」はサイバーパンクアルバムだ。 発展した技術と引き換…

私の日は遠い #7

昨日の深夜、渋谷で大規模なテロがあったらしい。 ニュースでも大々的に取り上げられていた。しかし、夏樹はそんなことには全く気づいていなかった。たまたまめんどくさくてテレビをつけずに音楽を聴きながらダラダラと過ごしていたし、SNSを覗くこともなか…

私の日は遠い #6

夏の夜空が深く街を飲み込んでいこうとしていた。真夜中の匂いが何人かの人間を追憶の彼方に突き放し、かと思えばうだるような暑さに目を覚ます人間もいた。 そんなボヤけた時間軸の中で、銀の翼をはためかせて夜空を舞う何かがいた。それは達夫だった。かつ…

私の日は遠い #5

法子は全てを破壊したい衝動にかられていた。ついさっきまではなんとか冷静さを保ちながら朝食の分の食器を洗ったり洗濯物を干したり猫砂を取り替えたりしていたが、ちょっともうダメそうなところまできてるな、と法子は感じていた。頭が変に熱を帯びてきて…

私の日は遠い #4

達夫は千切りキャベツを食べるのに飽き始め、うんざりしていた。せめて残り少ない残金をみじん切りしたらその分お金が増えるみたいな意味わからない魔法があればいいのになとつまらないことを考えながら寝転がっていた。午後の暑さがピークを過ぎた夏の夕暮…

私の日は遠い #3

夏樹は油断していた。夏休みに入ってしばらく経ってから数学の課題を学校に置きっぱなしにしていたのに気づいたこと、ただ取りに行くだけだから学校までは私服で行こうかなと考えてしまったこと。そして、家でぐうたらするノリでノーブラのまま街に出てしま…

私の日は遠い #2

「全く、今日はとんでもない一日だったわ」 男はそう呟きながら車を発進させる。朝から降り続いていた雨は30分くらい前に止んで、車体から真っ直ぐ伸びるライトの光が濡れた路面を照らして夜の景色を彩っていた。しかし男はそんなところに繊細な感情の機微を…