「シン・ウルトラマン」鑑賞後メモ

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・「ぶっ壊れた」感覚を持っている作品なのか、それとも単に壊れているだけなのか。自分はまだ判断をしきれないでいる。しかし現時点では正直なところ、あまり見返したいとは思っていない。

 映画というよりはアニメ的なカット割りの速さと奥行きのない平面的なダサい画面が連続する時点でかなりしんどかった。「シン・ゴジラ」公開時の自分はまだ宇多丸ムービーウォッチメンの洗礼を受けていなかったので今とは違うラフな感覚で観た記憶があるが、こんなにドイヒーだったかな?というくらいキツかった。あらかじめもうアニメを見るような気持ちで臨んではいたが、それでも「…」というカンジ。前半はつまらないアニメ、後半はテレビCMを見ているような気分だった。

・別の作品を観た際のことと比較してみる。

 先月、自分はレオス・カラックス監督の「アネット」という作品を見た。正直、レオス・カラックスという人やその作品に関する知識をほとんど持ち合わせておらず、単に「三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE: The Podcast 」を聴いて興味を持ったからという理由だけで見に行った。その内容やトーンはかなり独特なもので、素直にエンタメとして楽しむのは少し難しいところもあるのだけど、それでも作品内のちょっと変わったトーンや演出の数々がきちんと表現したい主題に沿っているものであるというのはカラックス素人の自分でも分かるようにはできていた。

 それと比べてみると、この「シン・ウルトラマン」という作品は、ほぼウルトラマン素人の自分が観ると単に映画においての語り口の技術や丁寧さに欠けているようなものにしか感じられなかった。

 現実の社会問題への言及の仕方も分かりづらく中途半端なので、いまいち主題をハッキリつかむ事ができず散漫な印象を持った。

・上記のように色々書いてしまったが、損得勘定のみを基準にして行動するザラブやメフィラスと対になる存在として、本人でも理由はわからないが人類を助けようとするウルトラマンがいるのだという意見はとても面白いと思った。

 これを基準にして考えると、なんか間抜けに見える物語内の人間たちは現実での我々を象徴しているようにも見える。地球の環境問題等を考慮すれば、もはや消えてしまった方がいいかもしれない人類を無条件で、無償の愛で肯定してくれる(人間とは違う行動原理を持つ)ウルトラマンは、たしかにステキな存在かもしれない。そんなに簡単に死のうと思える人間、きっとそう多くはないだろうから。というか、こういう視点でもみれるのだということをもう少し上手くどこかで示してくれたら嬉しかったのだけど。