パワー・オブ・ザ・ドッグ

Netflixで「パワー・オブ・ザ・ドッグ」を観た。

youtu.be

 

神(GOD)を照らす光が生み出した影(DOG)を、その母体から切り離すことは出来ず、つまりは永遠に追いつくことはないであろう影踏みに人生を捧げ続けなければならなかったその男は、

わかりやすくトキシック・マスキュリニティを体現している。

だが、そいつには、ただの酷えヤツという烙印を押してハイおしまいと済ますにはなんだかもったいない人間らしさがプンプン漂う。

ドクターストレンジも演じてみせるベネディクト・カンバーバッチがまさに魔術の如くフィルという人物に色気を纏わせる。

 

本編46:40辺りからの、ピアノでラデツキー行進曲を練習するローズをからかうフィルのウザさとお茶目さが全開の場面がたまらない。

ローズが本当に可哀想な場面ではあるのだけど、正直最後のフィルのドヤ感に溢れたキメ顔のショットで爆笑してしまった。

この場面を見るためだけにでも見てもらいたい作品。まあ、これ以外の部分も素晴らしいのだけど。

 

大なり小なりみんな愚かさを抱えて生きているわけで、そう考えるとフィルに垣間見えるある種の純粋さや無邪気さは小さな救いでもあるのではないだろうか。

それによって迎える結末がどんなものであれ、何かを信じて生きていくしかない。

逆さに見える「神」の幻が、いつもどこかでこちらを見ている。