飛ぶぞ。 〜THE SUICIDE SQUAD〜

「あー、この映画、一生観てられるな…」

そんな言葉がふと俺の脳裏をよぎった。何度も。

理屈抜きで面白すぎるし、理屈を込めても面白すぎる。これは、飛ぶぞ。

事実俺は飛んだ。何度も。空高く舞い上がっていった。

思わず劇場で「イクーーっ!」って叫びそうになった。何度も。

こんな快楽を感じたのは久しぶりだ。映画で。やっぱ映画は飛ぶな。

好きなひとに落としたものを拾ってもらえたときのような、太古のトキメキも再発掘されて共鳴しちゃうみたいな…もう…この止まらないドキドキとトキメキはなんだ。

その答えを追い求めるように俺はこの週末だけで3回劇場に足を運んだ。もちろん観たのは

THE SUICIDE SQUAD

youtu.be

この作品は60、70年台の「戦争強盗映画」のフォーマットをベースにしており、それによって生じる荒々しくモッサリとした物語のテンポ感や演出が、スーサイドスクワッドのどうしようもないヤツら(褒め言葉)のどうしようもなさ(褒め言葉)とガッチリ噛み合って最強最悪の(つまり最高の)グルーブ感を生み出している。

まあしかし、その「どうしようもなさ」は隅々までコントロールの行き渡った「どうしようもなさ」であり、ひたすら低俗で心地よい。本編は136分なのだけど、3時間くらいのバージョンがあっても全然いいとすら思える。

 

ジョニーキャッシュの「Folsom Prison Blues」が流れ、マイケルルーカー演じるサバントがボールをぶん投げて小鳥をぶち殺す幕開け。

彼のその後の展開も含め、「子供を殺す」ような行動は「地雷」というのが最も重大な線引きのひとつとして、本編の様々な箇所で提示される。

それはつまり、この作品の監督であるジェームズガンが、最近のある出来事について徹底的な自己言及を行なっているということを端的に示している。全編がガッツリその出来事についての話でもある。

詳しくは下記のリンクの文章を読んだ方がわかりやすいと思うので、詳しい事情をまだ知らない人にはぜひ読んでみてもらいたい。「鳥」とか「ネズミ」の意味するところがわかりやすくなると思う。

theriver.jp

そういえば、最高なシーンがとにかくたくさんあるというか(まあ全部そうなんだけど)、K.Flayの「Can’t Sleep」という曲が流れるところとか、なんか、あんな最高なクラブのシーンないんじゃないのかって思ってしまう。うん、最高なところは書き出すとキリないね。

具体的な良いところとかは、まだ公開されたばかりだし、また後日ダラダラと書こうかなと思う。以下に劇中で流れる曲のプレイリストくらいは貼っておこうかな。

open.spotify.com

スーサイドスクワッドというと、2016年に公開されたデヴィッドエアー版があるのだけど、この作品に関しては監督が当初考えていた方向性を途中でいわゆる大人の事情的なもののために変えられてしまっていたそうで。

このことに関してもジェームズガンはしっかり理解をした上で今回の作品に取り組んでいたことがパンフレットにも記載されている。

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事実、ほんとにデヴィッドエアーに対してのリスペクトを示しまくっているのは作品を観るとビンビンに伝わってくる。

特にハーレイクインに関しての演出はそれが端的に表れていると思う。デヴィッドエアー版がなかったら彼女もいなかったしね。

中盤の、ルイ・プリマの「Just A Gigolo(I Ain’t Got Nobody)」が流れる彼女の戦闘シーンは観てると、なんか楽しすぎて泣けてくる。

クライマックスのとある演出とかも、デヴィッドエアー版の演出と呼応するような形になっていると思う。

今回のハーレイクインの「善悪とかどうでもいいし、興味あることにしか興味ない」感は開放感があってとっても気持ちいい。

他にも役者単位の話だと、主演のイドリスエルバは厚みを出しつつ軽やかさも同時にあって重苦しくならないというか、そこはさすがだな〜と思った。

サメ男のキングシャークの声がスタローンなのは、なんか沁みてくるものがあるというか、そりゃスタローンしかいないよなってなる。

そしてジョン・シナ。おまえ、ワイスピ新作にも出てるやんっていう。

…うーん、まあ、とりあえず全員最高じゃね??

 

まあ、一時的にキャンセルされてしまったジェームズガンがこんなヤバい一撃で舞い戻ってくるとは、いやそりゃジェームズガンだから面白いの作るだろうなとは思ってたけど、まさかここまでブチのめされるとは思ってなかった。

 

こんなテンションの文章書いてるくらいだからね、もう、これは個人的に年間ベスト確定というか、一生観ていたい。