先日、渋谷アップリンクで「JUNK HEAD」という映画を観た。
堀貴秀さんという方がほとんどひとりで7年かけて制作した、SF長編ストップモーションアニメは各所で絶賛され、話題になっている。俺が大好きな宇多丸さんもラジオで絶賛していた。
「JUNK HEAD」の魅力は、映像の「グチャグチャした質感」にあると俺は考えている。
「マリガン」と呼ばれる人工生命体の「エイリアン」を連想させる造形や動き、また地底人たち(?)が独自の言語でわちゃわちゃやり取りをしている様子が、観ているうちにクセになる。
物語の構成も、おそらく意図的にではあると思うが、ぐちゃぐちゃしている。
主人公が当初持っていた目的は、あらゆるハプニングで頓挫し、新たな出会いがあり、それによって新たな目的や任務を授かることになる。紆余曲折の連続だ。
アホみたいに広大な地下世界では予測不能な事態しか起きない。
ここには、かつて様々な職種を転々としたと発言されている堀さん本人の人生観が込められているようにも思える。
そこに答えや終わりはないが、その旅の過程に豊かさを見出すことはできるのかもしれない。←(関係ないんだけど、昔ジェフミルズも同じようなこと言ってたらしいって最近本で読んだから、こんな風に書きたくなった)。
まあ、その他にもかなりしょうもないギャグや演出が連発されるのも魅力のひとつだと思う。
個人的には、「3バカ兄弟」と呼ばれる黒い三人兄弟のキャラのやり取りがとても印象的だった。
人形の可動域の問題もあるからなのか、ツッコミを入れるときになにかとドロップキックをかますのが何度もみるうちにすげー笑えてしまった。
物語の終盤にはジョンウィック的な、背面で地面に滑り込みながら敵の腹部に銃弾を打ち込むアクションをやったりもしてて、そういうしょうもないディティールをアホみたいに丁寧に再現しようとしているところに胸がアツくなる。
「JUNK HEAD」のテーマのひとつとして「肉体の変容」というのがあると思う。
物語の中で主人公の肉体は何度も破壊され、その度に違う人間(?)に修理され、再び動き出す。
授けられた肉体によって見た目や役割が変容していく。
そのなかで、魂だけは変わらずに同じものがそこに宿っている。
それを大事にして貫き通すことで成し遂げられることがある。
異常なほどの執念で作品を完成させた堀さんのスタンスそのものでもあると思う。
だからここには堀さん自身の「魂」が宿っている。ぐちゃぐちゃした強力な「肉体」と共にそれは俺たちのアタマん中をめちゃくちゃにする。